ストレス社会といわれる昨今、精神看護専門看護師の需要が増えているといわれています。精神看護専門看護師とは精神看護の専門的な知識と技術を持つと認定された看護師です。
その仕事や役割、精神看護専門看護師になる方法について詳しく説明します。
目次
精神看護専門看護師の仕事や役割について
みなさんは「認定看護師」や「専門看護師」という名称を耳にしたことがあるでしょうか。認定/専門看護師とは日本看護協会(JNA)が特定の分野に関して優れたスキルや高いスキルを持つと認めたことを証明する呼称です。
その認定/専門看護師のなかで、精神看護の分野について質の高い看護のための知識と技術を有すると認定されるのが精神看護専門看護師です。
精神看護専門看護師とは?
JNAでは水準の高い看護ケア提供を通して、看護学の向上や保健医療福祉の発展を目的に専門看護師制度を設けています。この制度にはがん看護や老人看護など全部で10の分野があり、その1つが精神看護の分野です。
精神看護とは精神疾患をもつ患者に対する看護を指し、この分野で高水準の知識と技術を持つとJNAが認めた看護師が精神看護専門看護師という名称を名乗ることができます。
仕事内容と役割は?
JNAでは精神看護専門看護師の仕事と役割について次の5点を挙げています。
(1) 精神疾患を持つ患者や家族に高水準の看護を提供
精神看護専門看護師は精神疾患を持つ患者に対して、水準の高い知識と技術を持って看護にあたります。患者の家族や同居者などに対しても同様で、心や精神の悩み、患者本人に関する悩みなどを持っていれば相談に乗るのも仕事のひとつです。
(2)一般病院でリエゾン精神看護の役割を提供
リエゾン精神看護とは、精神看護専門看護師が他の診療科の看護師と連携し、その科の患者の心や精神のケアを行なうことをいいます。リエゾンとは連携や橋渡しという意味で、精神看護専門看護師はこの分野の看護のプロとして、診療科にこだわらず自分が持つ知識や技術を提供する役割を担っているわけです。
精神看護専門看護師がリエゾンナースと呼ばれることもあるのは、こうした理由があるためです。
(3) 看護師やケア提供者へのコンサルテーション
精神看護専門看護師は心や精神の悩みを持つ看護師の相談に乗り、メンタルヘルスのケアやサポートを行なう役割を担うとされています。必要であれば看護師に限らず、さまざまな医療スタッフの相談にも対応します。ケア提供者というのは患者のケアを担当する医療関係者(看護師を含む)のこと、コンサルテーションとは相談や専門家による診断のことです。
(4) チーム医療の円滑なコミュニケーションを図る
保険医療福祉に携わる人たちが、患者や家族のケアを円滑に進めていけるようコーディネーションを行ないます。コーディネーションとは調整をしたり全体をまとめるという意味で、コーディネーションは効果的かつ効率的に患者や家族のケアが進めるための役割を担当します。
(5) 精神看護の知識や技術の向上と開発のための研究
精神看護に限らず、専門看護師にはその分野の知識や技術を向上させるための努力や開発を目的とした研究を行なう役割が求められています。特に精神看護の分野は急速な研究が必要とされており、専門看護師として重大な責任の一端を担っているといえるでしょう。
以上が精神看護専門看護師の主な仕事と役割です。基本は患者や家族に質の高い看護を提供することですが、チームの医療スタッフや他の診療科の患者の心の健康を守るのも使命のひとつです。
精神看護に関する研究や教育、知識・技術の普及とともに、精神看護専門看護師の重要な仕事や役割といえるでしょう。
精神看護専門看護師になる方法について
専門看護師の認定を受けるには日本看護協会(JNA)の認定審査に合格する必要があります。この試験に合格することにより、精神看護専門看護師と認められます。
認定審査の受験資格条件
JNAでは毎年1回、専門看護師の認定審査を実施しています。この審査を受けるためには次の要件をすべて満たしている必要があります。
・日本の看護師免許を取得している
審査を受けるには、日本国の看護師免許を有していなくてはなりません。もし、現在看護学生であったり、将来的に看護師になりたいという人は看護師免許を取得してください。
・看護系大学大学院で修士課程を修了している
日本看護系大学協議会の専門看護師教育課程基準が指定する科目単位を取得している必要があります。看護学以外で関連する領域の大学院を修了していれば、これから必要単位のみを取得すれば受験資格が得られます。
・看護師の実務経験が5年以上ある
・精神看護の実務研修経験が3年以上ある
看護師としての実務経験が通算5年以上で、うち3年以上の精神看護の実務研修経験があることが要件です。実務とは精神看護分野の看護経験を指します。加えて精神看護に関する次の実務研修を修了していなければなりません。
1.個人、家族、集団に対する直接的な看護実践
2.看護職を含むケア提供者へのコンサルテーション
3.円滑なケアのためのスタッフ間のコーディネーション
4.個人や家族などの権利を守るための倫理調整
5.ケア向上のための看護者に対する多様な教育機能
6.専門知識と技術向上、開発のための実践的な研究活動
上記の実務研修は精神病院、精神科クリニック、総合病院(精神科の外来・病棟)、精神科デイケア、精神保健福祉センター等をフィールドとします。ただし、リエゾン精神看護の志望者は履歴書や実務証明書にその旨を記載すれば精神病院や総合病院の精神科病棟なくても構いません。
申請方法
1.WEB申請を行なう
インターネットのJNA公式サイトでユーザー登録をしたうえで、「資格認定制度 審査・申請システム」のページから申請を行ないます。登録には看護師免許番号と看護師免許証(画像)が必要です。
2.審査料の振り込みを行なう
審査料は5万円+消費税です。
3.申請書類を提出する
・郵送するもの
認定審査申請書類、履歴書、看護師免許の写し、履修単位自己申告書、履修単位証明書(または成績証明書等)、勤務先の勤務証明書、看護実績報告書
・オンライン提出するもの
看護師免許証(画像)、履歴書、履修単位自己申告書
審査方法
1.一次審査(書類審査)
2.二次審査(看護実績報告書・筆記試験)
筆記試験は論述式で、事例問題と総合問題が出ます。配点は各100点で、試験時間は合計120分です。
審査結果はJNA公式サイトの「資格認定制度 審査・申請システム」で発表されます。新規認定者は公式サイトで1カ月間公表され、不合格者には文書で審査結果の詳細の通知があります。合格者は認定料(5万円+消費税)の振り込みを行ない、公式サイトで認定登録情報の確認と公開情報の登録を行なうと認定登録手続きは完了です。
精神看護専門看護師の審査試験に関する要件は年度によって変更される場合があります。審査を希望する人は事前にJNA公式サイトで内容を確認することをおすすめします。
精神看護専門看護師になる方法
ここまで精神看護専門看護師になる方法について説明してきました。現実問題として専門看護師になるのは簡単なことではありません。
受験条件ひとつとっても、大学院での履修や実務研修経験が必要になるなど時間も費用も掛かることは事実です。ただし専門看護師審査の合格率は95%程度と高いので、まずは受験要件を満たすことが重要になってくるでしょう。
全国の病院のなかには専門看護師になるための支援サポート制度を設けているところがあります。現在勤務している病院にそうした制度がない場合は、サポート体制が整っている病院に転職するのもひとつの方法です。
- 精神疾患を持つ患者に水準の高い看護を提供する仕事
- 他の診療科の患者にリエゾン精神看護も行なう
- 患者だけでなく医療スタッフのメンタルヘルスケアも
- 日本看護協会の認定審査に合格すると専門看護師になれる
- 受験条件が厳しいという特徴があるが審査合格率は高い
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