日本の人口比率はすでに超高齢社会と呼ばれる段階に来ています。高齢者が多くなれば当然医療を必要とする人が増え、入院しなければならない病気ではなくても、ほとんどの高齢者は何らかの看護やケアを必要としている状態です。
このような社会背景から、高齢者看護のスペシャリストである「老人看護専門看護師(CNS)」への注目が高まっています。
高齢者ケアの需要増加が予測される今、老人看護専門看護師の仕事と役割、必要とされるスキルや、認定を受けるためにはどうすればよいのかを確認しておきましょう。
老人看護専門看護師の仕事と役割
老人看護専門看護師は、日本看護協会が認定する11の専門分野のなかで、比較的早めの2002年から認定が開始されています。
老人看護専門看護師の仕事
老人看護専門看護師は、病院や福祉施設で働きながら、高齢者看護のスペシャリストとして高い知識やスキルを活かした看護を行うほか、高齢者本人と家族をサポートすること、担当医や保健医療福祉に関わる他職者たちとの連携、他の看護職者に対し指導をしたり相談に応じること、さらには高齢者看護を通しての研究を進めるのが仕事です。
老人看護専門看護師の役割
日本看護協会が挙げている専門看護師の主な役割とは「卓越した看護の実践」「コンサルテーション」「コーディネート」「倫理調整」「専門分野教育」「実践の場での研究」です。
老人看護専門看護師には、先述のような仕事においてこの6つの役割を果たすことが期待されています。看護業務では老人看護のスペシャリストとして、認知症や慢性疾患などそれぞれに健康問題を抱えた高齢者のQOL向上のため、質の高い看護を提供します。
高齢者看護では、高齢者をケアし続ける家族への配慮も欠かせません。家族の負担を考慮しつつ、専門家として適切なアドバイスをしたり相談にのることで家族の心身の負担を緩和します。
このような役割は病院や施設などの現場にとどまらず、関係各所や地域を巻き込み、高齢者看護への意識を高めることが期待されています。
老人看護専門看護師の活躍の場は?
勤務先として最も多いのは、医療センターや救急センターなどの急性期病院、老人病院、大学病院や公立病院などです。研究・教育分野で活躍する方も多く、看護系大学で教員を勤めたり、国立長寿医療研究センターの研究員となっている方もいます。
そのほか、高齢者利用が多いリハビリテーション病院や老人介護施設、訪問看護ステーションなどで活躍しています。
老人看護専門看護師に必要なスキル
個々の高齢者の尊重
高齢になれば何らかの不調が多くなるものですが、その程度は人によって様々です。慢性疾患や認知症症状も関係している老人看護では、マニュアル的な対応ではなく個人に合わせた看護が必要になります。
また高齢者は誰もが人生の先輩です。これまでたくさんのことを経験し学んできた自負があり、尊敬すべき存在です。この意味でも老人看護専門看護師には、患者さんの言葉や意志をしっかり受け取め、尊重する姿勢が大切になります。
周囲との連携、コミュニケーション力
高齢者の周囲では、家族や親族のほか、医療スタッフ、介護スタッフ、地域での知人友人など多くの方が関わっています。高齢者看護は一人でできるものではなく、これら周りの人々と協力、連携して初めて成り立つものです。
老人看護専門看護師は看護のプロとしてその中心となり、必要なアドバイスをしたり、連携をはかるためのよりより関係を維持できるコミュニケーション能力が必要とされます。
臨機応変な対応
体力が低下してくる高齢者では、少しの体調の変化や対応ミスが命に関わる状況につながりかねません。敬意をもって接しながらも必要なケアは迅速に、的確に行う必要があります。
そのときそのときに合ったやり方で、柔軟に対応を変えながら看護を遂行できる臨機応変な対応力を培っておくと役に立つでしょう。
老人看護専門看護師になるには
2016年時点、全国で93名が登録・活動する老人看護専門看護師の試験の合格率は90%前後ですが、試験合格への道は決して楽なものではありません。この高い合格率の前提として、受験条件を満たすため、所定の教育機関で学ぶための大きな努力が必要なのです。
老人看護専門看護師を目指すには
認定試験を受けるための条件として、
・日本の看護師免許を持っている
・実務経験5年以上、うち老人看護分野での実務が3年以上
・老人看護の実績報告書の提出
があります。
老人看護分野とは、高齢者の入院、入所、利用者が多い施設での勤務を指します。実績報告書には、これらの施設で経験した直接的看護実践を2例、ケア提供者に対するコンサルテーションを1例、ケアを円滑に行うための保険医療福祉関係者間のコーディネーションを1例、ケア提供者への教育活動を1例、これらすべてのレポートを記載しなければなりません。
上記の条件を満たしたうえで、全国38か所の大学院で開講される教育課程基準の所定単位(26~38単位)を取得し、2年間の修士課程を修了して初めて、老人看護専門看護師の認定審査(書類審査と筆記試験)を受けることができます。
老人看護専門看護師を目指すには、実例報告となるような老人看護経験を積むことができ、2年間の修学を支援してくれる環境が必要です。金銭面では200万円程度は必要で、勤務先によっては修学費用の一部、または全部を負担してくれるところもあります。
老人看護専門看護師の将来性
超高齢化が進む日本において、老人看護分野の担い手としての看護師需要が、今後ますます増していくことは間違いありません。そのなかで専門看護師には、周囲の意識を高める提言をしたり、緩和ケアを含む高齢者にふさわしい看護の提供を行っていく役目があります。
周囲からの期待は大きく、需要とともにやりがいのある仕事となることでしょう。活躍のフィールドは、都市部・地方を含め、病院から高齢者向けの各種福祉施設、在宅医療サービス、大学などの研究機関まで広がっています。
- 個々の高齢者に合わせた質の高い看護、家族の負担の緩和を担う
- 他職者や地域との連携をはかり、実践の場で研究を続ける
- 急性期病院、総合病院や各研究機関、老人介護サービス施設で活躍する
- 高齢者を尊重しながら臨機応変に対応できる柔軟性が必要
- 周囲の関係者との連携を図るコミュニケーション力
- 条件を満たす実務経験と2年間の修学が可能な環境を整える
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