学校保健室への看護師転職は難しい?



学校保健安全法という法律の規定に基づき、私立、公立を問わず、小学校、中学校、高校、大学、短期大学、専門学校など、学校の多くには保健室があります。保健室という呼称のほか、衛生室、医務室、保健センター、保健管理センターといった名前が用いられる場合もあります。

この「保健室の先生」としての雇用が、看護師の転職における人気の選択肢の一つとなっています。


学校保健室の看護師、どんな仕事をするの?



学校保健室で働く看護師の主な仕事は、学生、職員の健康をサポートすることです。急病や怪我をした人に対し、処置をしたり場合によっては病院へ付き添うほか、定期的な健康診断、健康指導、カウンセリングなどを行います。

自身が学生の頃、保健室に常駐していた養護教諭の役割と思えば、イメージしやすいでしょう。普段学校に登校してきているのは健康な人ばかりなので、その健康を守るための啓発や予防といった業務が主になります。

近年では、不登校やいじめ被害の悪化が社会問題となっており、教室で過ごせない生徒が保健室で過ごす「保健室登校」といった対応もあります。教師、学校カウンセラーや保健師らと協力してケアに当たることもあります。


学校保健室で働くメリット・デメリット


メリット

急病や怪我の処置といっても、重篤な症状の発生はほとんどなく、多くの場合ちょっとした不調の対応や怪我の手当て程度です。病院で昼夜を問わず生命の危機に立ち会ったり、重篤な患者の対応をしたり、大きな手術に立ち会ったりといった看護師業務に比べれば、緊張感は格段に少なく、ストレスを感じるシーンはありません。

体力的にも、患者さんを抱え上げたり、常に立ち仕事で看護をするといった体力的な負担がなく、学校の時間に沿った日勤でデスクワークが多いため、かなり楽になります。


病院では、多くの女性スタッフとのチームワークで、緊張感が必要とされる日勤・夜勤に当たることとなり、ゆとりのなさから人間関係がややこしくなりがちです。突発的な出来事やちょっとした誤解で、コミュニケーションが足りずにぎくしゃくしてしまうケースが見られ、これにより体調を崩してしまう看護師もいます。

学校保健室勤務ではこのような日常的な対人関係ストレスの心配がなく、転職を目指す際の大きなメリットとして挙げられるでしょう。


常勤の社会人として、安定した収入を得られるのも嬉しい点です。月収は大体25万円前後であり、病院勤務と比較すると「夜勤・残業手当がなく、年収が下がってしまう」と感じるかもしれません。

しかし見方によっては、日勤のみで、看護師特有のハードワークやストレス環境がなく、ゆとりのある働き方をしている割には十分な年収を得られる、と考えることもできます。


業務の性質上、ステップアップで年収を上げていきたい、頑張って業績を上げたい、といった希望にはマッチしませんが、一定の収入のもと、余裕をもってライフスタイルを設計することができます。

日勤のみで休みがしっかりと取れ働きやすい職場であり、退職を考えるようなストレスも少ないので、長く安定して働ける転職先と言えます。

デメリット

看護師が学校保健室へ転職する際のデメリットとして、「求人機会の少なさ」が挙げられます。学校の絶対数はそれほど増えるものではないうえ退職者が少ないために、新規の求人数が少なく、倍率は必然的に高くなります。

普段からしっかり情報収集をし、学校保健室への転職の機会を逃さないようにすることが重要です。

ストレスなく長く続けられる仕事ではあるものの、看護師としてのスキルアップは望めないという点は、人によってデメリットとなることもあるでしょう。学校保健室から再び病院へ転職したい時にも、学校保健室勤務の実績を看護スキルとして認めてもらうことは出来ません。

保健室看護師に転職するメリット・デメリット、ここまでのまとめ


    <メリット>
  • 精神的、体力的に楽
  • 日勤のみ、週末休みが確保できる
  • 人間関係のストレスがない
  • 長く安定した収入

  • <デメリット>
  • 求人自体が少なく、転職チャンスが希少
  • 人気なので倍率も高い
  • スキルアップは望めない


学校保健室の求人募集は少ない?



日本全国の市町村にいくつもの学校が存在しているにもかかわらず、その保健室での求人が少ない理由には、いくつかの事情が関係しています。

まず、どの教育機関においても、保健室に看護師を常駐させているわけではありません。大学や短大などで多いケースとして、保健室は施設としてあるもののそこに職員が常駐しているわけではなく、近隣の病院などと連携して、生徒やスタッフの健康管理が行われているところがあります。


また、学校保健室の職員候補となるのは、看護師のほかに保健師もいます。いずれを採用するかは学校が求める業務の性質や方針によりますが、全ての保健室が看護師求人の対象になるわけではないのです。

先のメリットで触れたように、学校保健室への勤務は、看護師でありながら就業は日勤のみ、週末もしっかり休めて、家事や育児をしながらでも働きやすい職場です。そのために一度学校保健室へ就職するとその後の離職者が少なく、補充の必要性がないために求人数が少なくなっています。


病院やクリニックでは定期的に新しい看護師を補充したり、仕事のハードさや職場環境、家庭の事情やステップアップなど様々な理由で離職者が多く、随時求人が出されています。結果的に常に求人を行っている施設もあり、看護師は売り手市場の状態です。

それとは対照的になかなか人材補充の必要性が出ない学校保健室では、どうしても求人が限られ、転職時の競争率がより高くなっています。


社会的な傾向を見てみると、いじめや様々なハラスメントなどでストレスを抱える学生や職員のケアの在り方が問われており、対策の一環として学校保健室そのものの重要性が高まっていると考えられます。

そのほかにも、食中毒事故、感染症蔓延のリスク、喘息やアレルギーといった体質を持つ子どもたちへの正確な対処のほか、若者の急性アルコール中毒事故などが度々社会問題として取り上げられ、その対策が叫ばれています。


このような環境において学校保健室の看護師が活躍する可能性は十分にあり、今後はより高いレベルのケアが求められていくことでしょう。これが将来的に、人材補強など求人の発生へとつながっていくかもしれません。

学校保健室の求人が少ない理由は、

  • 看護師が常駐しない施設もある
  • 保健師が採用される場合も
  • 働きやすさゆえに離職者が少ない
  • 社会的背景から今後求人発生の可能性はある


看護師が学校保健室に転職する方法



小学校、中学校の保健室では、養護教諭資格が必要な求人が多くなりますが、私立の学校や高校、短大、大学、専門学校では、養護教諭資格は不要とする求人も見られます。看護師免許のみで学校保健室への転職を考える際には、このような求人を選ぶことになります。

もちろん、看護師資格のうえ養護教諭免許もあれば、求人の選択の幅が広がります。看護師が養護教諭になるためには、全国に7つある指定の大学などの教育機関へ入学し、1年以上かけて必要単位を修了しなければなりません。

時間や学費が必要となるうえ、教育機関への入学自体もまた狭き門であるため、計画的に情報を調べて、しっかり勉強、準備する必要があります。

学校保健室看護師の採用で重視される条件とは?

倍率が高い学校保健室求人の採用では、これまでの看護師としての実務年数やその内容が重視されます。学校や期待される業務内容によって様々ですが、看護師としての実績が少なくとも2~3年という条件が多く、なかには5年以上とする求人も見られます。

他の学校医務室などでの勤務実績があると、より即戦力として捉えられ応募に有利ですし、求人によってはこの実績がないと応募できないものもあります。


学校保健室求人の応募は、看護師のほか保健師も対象となりますが、学校の方針や性質によって、業務の軸足が看護業務を重視するケースと、保険業務を重視するケースがあります。もちろん看護師にとって有利なのは、前者の看護経験を求める職場です。

様々な診療科を経験していたり、他保健室で勤務していたなど、実績があればあるほど魅力的な人材と評価されるでしょう。

学校の規模がいくら大きくても、保健室のスタッフ数も多いということはありません。できるだけ少人数で、看護・保健業務をカバーするという施設がほとんどです。

このような背景から、求人には必要資格として「看護師免許」しか記されていなくても、看護師免許だけでなく保健師免許も持つ応募者を採用する、というケースは多く見られます。

学校保健室看護師の採用で有利になのは?

何としても学校保健室の看護師に転職したい!と強く希望する場合、まずは保健師免許や養護教諭免許を取得しておくという選択肢もあります。時間がかかり回り道のように感じるかもしれませんが、求人応募では確実に有利な材料となります。

保健師もまた看護師と同じ国家資格であり、指定された勉強を経て試験を受け、合格する必要があります。


先に触れた保健室登校など、学生や職員へのカウンセリングも業務の一環であることから、看護や事務のスキルだけでなく、悩みを抱えた生徒に寄り添う包容力やコミュニケーション力も必要とされる職業です。

学校保健室への転職は、スキルアップ・収入アップを第一条件としない看護師にとって、また仕事と家庭の両立を考える看護師にとって大変望ましい求人ですが、狭き門であるうえ、求人が常にあるわけでもありません。


転職を成功させるには、数少ない求人情報を素早くキャッチし、計画的に応募していくことが重要になり、その際に必ず活用したいのが看護師専門の転職サイトです。

非公開求人を含め、取扱求人数が多い転職サイトならば、希少な情報の取りこぼしを防ぐことができます。登録時に「学校保健室希望」を伝えておくことで、求人が出たときに素早く紹介を受けられ、求人が出るまでの間も学校保健室の業務について転職コンサルタントに相談したり、準備を進めておくことが可能です。

学校保健室の看護師、求人募集が少ない?・まとめ

  • ゆとりをもって長く働きたい方に向いている
  • 離職者が少なく人気が高い
  • 看護教諭資格、保健師資格が条件となる場合も
  • 実務経験があった方が有利
  • 求人情報を見逃さないよう準備する


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