医療のプロである看護師でも職場ストレスを感じたり、パニック障害やうつ病(鬱病)などメンタルの病気になることがあります。「医学の知識があるから大丈夫」「メンタルの病気になるはずがない」と思い込まず、少しでも異常を感じたら早めにケアを行ないましょう。
ここでは現役の看護師に多いメンタルの病気の原因や症状、予防方法、対処方法などについて詳しく紹介していきます。
看護師に多いパニック障害やうつ病について
最近、メンタルの異変を訴える看護師が増えています。特に看護師に多いのがパニック障害やうつ病(鬱病)などの心の病気です。
患者の生命を預かる看護という仕事には「失敗が許されない」などのプレッシャーが付き物ですが、職場ストレスが増大して重篤な状態になる可能性もあります。看護師に多いメンタルの病気を詳しく知り、予防や対処に努めるようにしましょう。
次に現役看護師が掛かりやすい心の病気、パニック障害とうつ病について説明します。
パニック障害(PD)
激しい動悸やめまいなどの発作が繰り返し発生する不安障害の一種です。特別な理由がないにも関わらず突発的に強い不安感に襲われたり、再発するのではないかという恐怖感を覚えるとパニック発作を起こしやすくなります。
パニック障害には「予期不安」と「広場不安」という2種類の症状があり、発作が起こるかもしれないという不安や人が大勢いる場所にいけないという恐怖を感じると発症しやすくなるものです。発作が起こっても約10分間程度で症状は納まりますが、その間は「死ぬかもしれない」「救急車を呼んでほしい」と感じるほどの苦痛が起こります。
主な症状
動悸、めまい、発汗、息苦しさ、息が詰まる、頻脈、吐き気、手足や体の震え、胸部の不快感、頭から血の気が失せる、腹部の不快感、寒気やほてり、しびれなどの知覚異常ほか
予期不安の症状
パニック発作の経験者が「再び発作が起こるのではないか」という強い不安感を覚えると起こる症状です。過去に発作が起こった場所に行くと考えただけで症状が発生したり、発作を経験した状況を思い出すとパニック症状が出たりすることもあります。
広場恐怖の症状
多数の人が集まる広場や繁華街、駅、電車、バス、エスカレーターに行くことに対して強い不安感を覚える症状です。こうした場所を訪れたり、訪れようと考えただけで発作が起こることもあります。そのため、繁華街や駅に行けなくなる、電車やバスに乗れなくなるという人もいます。
原因
パニック障害の原因の1つめは精神的なストレスやプレッシャーなどの心理的な要因です。看護師は人間の生死に関わる仕事に携わっているため、強いプレッシャーを感じながら多忙な業務をこなしています。
また医療スタッフや患者、付添いの家族などとの人間関係のストレスを感じることも多いため、パニック障害やうつ病になりやすいといわれています。
2つめは、脳の中にある脳内神経伝達物質であるノルアドレナリンとセロトニンのバランスの崩れです。まだ研究段階ではあるものの、この2種類の物質が外界からの何らかの刺激によってバランスを崩すとパニック障害の要因になると考えられています。
うつ病(鬱病)
気分が落ち込んで何をやっても楽しくない、食欲がない、夜眠れないなどの症状が続くのがうつ病です。うつ病の症状が出ると2週間以上は心身のエネルギーが低下した状態が続き、仕事や家事などの日常生活に支障をきたすようになります。
一部には本人の性格に問題があったり、精神的な甘えが原因と言われることもありますが、精神的な疾患であって性格や甘えにはまったく関係がありません。
主な症状
〔気分的な症状〕
気分が落ち込む、憂鬱になる、理由もなく泣きたくなる、将来を悲観する、気力が湧かない、自分に価値がないと感じる
〔意欲的な症状〕
何もしたくない、何事も億劫になる、何をしても楽しくない、興味がわかない、無関心になる
〔具体的な症状〕
仕事でミスしやすくなる、注意力や集中力が低下する、決断力や判断力がなくなる、落ち着きがなくなる、イライラする
〔身体的な症状〕
疲労しやすくなる、寝付きが悪くなる、夜中に目が覚める、食欲がなくなる、体の痛みがある、全身の倦怠感
原因
現在のところ、うつ病の原因は特定されていません。主な仮説は3つあります。1つめは脳内の神経伝達物質であるミノアミンが不足して起こるという「モノアミン仮説」です。
2つめは脳内で放出されたモノアミンの受け皿となる受容体の数が減少することが原因であるとする「受容体仮説」、3つめは脳内の神経細胞の障害が関連しているという説です。いずれも決定的な研究結果は出ておらず、今後の解明に期待したいところといえるでしょう。
うつ病の直接的な原因は解明されていないものの、発症には精神的なストレスやショックが関係しているといわれています。強いストレスを持続的に感じていたり、ショックを受ける出来事を経験したことがキッカケで発症する場合もあります。
ほかにも、仕事熱心で責任感が強い、正直で几帳面である、凝り症で完璧主義者であるといったタイプが発症しやすいという説もあるようです。
うつ病やパニック障害になっても働ける?
看護師がうつ病やパニック障害になったとしても、必ずしも仕事を辞める必要はありません。このような病気であっても、しっかりと看護師として働いている人もいます。
ただし、仕事を続けていたために症状が悪化するような状況であれば、自分自身のためにも治療を受けて完治させることを先決する必要があります。うつ病やパニック障害は本人の性格や気持ちの問題で起こるのではなく、医学的に見ても病気(疾患)であるという事実を認識してください。
うつ病やパニック障害は専門的な治療を受ければ完治も可能です。職場復帰するためには薬物療法や行動療法による治療が効果があり、医師のアドバイスを受けながら仕事に復帰することもできるでしょう。
医師の診断によって治療を続けながら仕事ができると分かれば、引き続き現在の看護の業務を行なえます。もし治療のために一時的に休職が必要になっても、心身の調子を整えてから復職することもできますから焦ったり諦めたりする必要はありません。
看護師のなかにはうつ病やパニック障害になっても仕事を続けている人が多数います。また一時休職しても病気を完治させて職場復帰している人も大勢いますので、まずはしっかりと病気を治すようにしましょう。
その他、看護師がかかりやすい心の病気について
看護師がかかりやすいのは、うつ病やパニック障害だけではありません。心身ともにハードワークが続く看護師は不眠症や過食症、アルコール依存症といった心の病気になりやすいといわれています。ほかにも働く女性に多い突発性難聴やメニエール病も看護師がかかりやすい病気のひとつです。
●不眠症
十分に眠れない状態が続いて本人も苦痛と感じる状態になり、仕事や日常生活に支障をきたすようになるのが不眠症です。神経疾患や内科的疾患が原因のこともありますが、精神的なストレスが原因で発症するケースも多く見られます。
●過食症
心理的な原因からくる摂食障害のひとつで、必要以上に食べ物を食べ過ぎるという病気です。食欲をコントロールできず、過食と嘔吐、下痢などが習慣化すると合併症を引き起こす原因になります。
●アルコール依存症
酒類などアルコールを長期にわたって摂取することにより、本人の意思だけでは止められなくなる状態をいいます。この状況が進むと禁断症状が出たり、職場や日常生活でも支障が出るようになります。
●突発性難聴
特定の原因はなく、突然耳鳴りやめまい、嘔吐などの症状が出るのが突発性難聴です。片側の耳に発症し聞こえないという症状になります。多くの場合は高度の感音難聴といって、ほとんど聞こえない状態になるのが一般的です。
●メニエール病
めまいや耳鳴り、耳の閉塞感、難聴などの症状が起こって、仕事や生活に支障をきたすのがメニエール病です。原因は内耳の障害ですが、ストレスが発症のキッカケになるといわれています。
心の病気にならないためには?
心の病気にならないためのポイントを3つ紹介します。
(1) 完璧を求めて頑張り過ぎない
常にミスをしない、完璧に仕事をこなそうとすると無理が出るものです。医療の現場では失敗が許されないのは事実ですが、頑張り過ぎないように注意してください。日頃の自分の努力を信じ、必要以上にミスを恐れるのは止めましょう。
(2) 疲れを解消して気分転換する
心の病気は精神的な疲労だけでなく、肉体的な疲労も原因のひとつになります。体調が悪ければ気分も沈みがちになるものですから、十分に休養を取ったり上手に気分転換するように心掛けましょう。
(3) 他人の評価を気にし過ぎない
誠実で真面目な人ほど心の病気にかかりやすいと言われています。周囲の目を気にし過ぎず、他人の評価に振り回されないよう注意しましょう。自分がベストを尽くしているなら十分と開き直って考えるのもひとつの方法です。
看護師が心の病気になりやすいのは、患者の生命を預かるというプレッシャーの大きい仕事をしているためといわれています。「ミスはできない」「失敗は許されない」という意識や、患者や付添いの家族、同じ職場の医療スタッフとのコミュニケーションなど、人間関係に関わるストレスも原因のひとつになっています。
心の病気が起こりやすい要因は、メンタルの弱さや性格の問題とは一切関係がありません。プレッシャーやストレスが大きく、心身ともに過労になりやすい職場では心の病気が起こりやすいということを知っておいてください。こうした認識を持ったうえで、心の病気にならないためのケアを行なうようにしましょう。
もしも現在の職場のストレスが心の病気の要因になるようであれば、より良い環境の職場に転職するという方法もあります。負担の大きい夜勤のある職場ではなく日勤専門の職場に転職したり、比較的ストレスを感じにくい派遣看護師として働くという選択肢も考慮してみましょう。
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- パニック障害やうつ病は職場ストレスが原因になる
- 心の病気になっても看護師を続けることは可能
- ただし症状が悪化するようなら治療に専念する
- 頑張り過ぎず疲れを解消して気分転換を図ろう
- 無理をせず、より良い職場に転職するという方法もある
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