認知症認定看護師の仕事と役割は?



高齢化の進む現代日本において、認知症の問題は避けては通れないものとなっています。認知症のケアやサポートにおいては、家族の協力や愛情が非常に重要となりますが、核家族化の影響もあって独居状態の高齢者が急増し、多くの認知症患者が適切な看護や介護を受けられずにいるというのが実情です。

この深刻な問題の打開策の一つとして注目されているのが、認知症看護認定看護師の存在です。ここでは、認知症看護認定看護師の基礎知識や役割についてご説明していきたいと思います。


認知症看護認定看護師とは



認知症看護認定看護師とは、日本看護協会(JNA)の認定看護師認定審査に合格し「認知症医療の分野で熟練した技術と知識を有すると認められた看護師」のことを指します。

認知症看護認定看護師は、認知症の患者さんとその家族の支援を担い、認知症に関する最新の知識と高いスキルを修得し、高水準の看護サービスを提供することができる看護師です。


認知症の発症から終末期まで、状況・状態を総合的に見ながら各期に最適な処置を行い、ケア体制の構築や家族のサポート、メンタルケアなどを実施します。また、患者さん本人の意思や生活習慣、こだわりなどを尊重し、人間としての権利や尊厳を守りながら、認知症症状の進行予防や緩和に取り組みます。

また、認知症のケアや治療においては、徘徊や暴言・暴力がつきもののため、看護師がそれらの対応に追われて計画通りの業務が行えないという問題が生じがちです。

認知症看護認定看護師は、そういった問題に対して専門知識と高い意識で取り組み、症状を段階的に分けた看護方法の構築や、看護師への指導・教育などを行い認知症チーム全体の看護レベルを向上させるなど、医療チームに大きく貢献することができます。


仕事内容や役割



認知症患者は、その病の特性から在宅や入院・施設入所を問わず、療養機関が長期化する傾向にあります。さらに、合併症などを含む病状・病態管理も頻繁に必要なため、認知症の治療やケアでは効果的な援助計画の立案し、それに対応できる高い臨床能力を持つ人材が求められます。

認知症看護認定看護師は、そんな高水準の認知症看護を実践する役割を担っており、高い臨床能力と熟練の技術、豊富な知識を用いながら、患者さん本人とそのご家族に対して、質の高い看護サービスを提供します。


また、認知症看護チームの看護師に対する指導・教育も重要な業務の一つとなっており、勉強会や研修会を計画・実施する役割も担います。

認知症看護に関しては、まだまだ看護師の間にもその概要や考え方が浸透していないこともあり、他の認定看護師と比較しても、組織を横断しての教育指導の機会が多い傾向にあります。


認知症看護認定看護師の給料



認定看護師の取得には多額の費用や労力が必要なため、登録後は給与UPがのぞめると考えられがちです。しかし、実際には認定・登録が給与に与える影響は少なく、基本給与は登録前と変わらないというのが実情です。

しかし、勤務先によっては「資格手当」「指導・教育手当」という形で数千円から数万円の手当が支給される場合もあり、長い目で見れば学費などを回収することは可能でしょう。

とはいえ、認知症看護認定看護師は需要が高まりを見せており、病院にも大きく貢献できるというアドバンテージもあるため、昇級に有利に働く可能性は高いと言えます。結果、役職が上がることで給与が上がる、ということには繋がるという考え方もあります。


認知症看護認定看護師に向いている人



認知症看護においては、発症から終末期に至る各期に最も適した看護を実践するため、看護計画の立案や体制づくりなどを綿密に行う必要があります。そのため、先を見据えた緻密な計画が行える方や、細かな部分まで詰めていくタイプの業務が得意な方は適正があると言えるでしょう。

また、認知症看護では看護師が患者さん本人の徘徊や暴力・暴言などで心身が傷つけられる可能性が高いため、自分を含め他の看護師の心と身体をケアすることも重要となります。そのため、共に働く看護師に対して心を砕き、適切な処置やメンタルケアができる人材が求められています。

認知症は治療が長期化する傾向にあり、専門分野の豊富な知識と熟練した技術を持つだけでなく、患者さんと長い時間をかけて向かい合う根気強さが必要となります。そのため、短気な人よりも気が長く、相手に心を寄せながら仕事ができるタイプの人が向いていると言えるでしょう。


認知症看護認定看護師になるには



認知症看護認定看護師となるためには、日本看護協会の認定看護師認定審査をクリアして登録をする必要があります。この審査を受けるには次のような条件を満たして置かねばなりません。

1.日本国の保健師、助産師および看護師、いずれかの免許を有している
2.実務経験が5年以上(うち3年以上は認知症看護分野の経験)
3.1、2を満たした上で、認定看護師教育機関において認定看護師教育課程を修了している(6ヶ月、615時間以上)


これらの条件を全てクリアすることで、認定審査(筆記試験)を受けることが可能となります。審査を合格すると認知症看護認定看護師認定証が交付され登録されます。

認定看護師となるために通学が必須となる認定看護師教育機関は全国に53ヶ所あります。通常講義は平日の昼間に行われているため、看護師として働きながら通学するのは極めて困難となっています。


そのため、認定看護師を目指して通学する方のほとんどが、学校近くにアパートやマンションを借り、一人暮らしを続けながら専門知識と技術を磨く毎日をおくっています。

通学をする約6ヶ月間は無給となる場合が多いだけでなく、生活費や学費などの負担もかかってくるため、受講を考える方は資金がどの程度必要なのかしっかりシミュレーションしておきましょう。


認定看護師教育機関は各都道府県にあるものではなく、一部地域に偏在しているというのが現状です。認知症看護の場合は全国に9校しか教育機関が存在せず、特に西日本には長野と兵庫県にしかありません。

通学を考える方は、事前に一番通いやすい教育機関がどこにあるのか確認した上で、転居などの予定を立てることをおすすめします。


また、認定看護師教育機関はすべての機関で共通のカリキュラムとなっていますが、学費や開校時期、スケジュールは異なります。入学を希望する教育機関が決まったらすぐに募集要項を取り寄せ、概要をしっかり確認しておきましょう。

なお、認定看護師教育課程は約6ヶ月間ですが、願書の取り寄せ、各種書類の準備、入試、授業期間、認定審査から認定証の受領などの流れを考えるとかなりの時間が必要となります。

一般的に、教育機関の受験勉強から認定看護師として勤務を始めるまで約2年の機関が必要とされます。時間的な余裕を十分に取った上で、認定看護師審査に臨みたいところです。


まとめ

超高齢化社会が急速に進む日本において、認知症看護認定看護師のニーズは加速度的に増して行くと考えられます。人員育成や人員確保も各地で進んでおり、目指すには最適な時期にあると言えるかもしれません。

しかしながら、審査に必要な「3年以上の認知症看護分野の経験」が満たせず焦りを感じるという方もいらっしゃるかもしれません。そういった方にオススメなのが、看護師専門の転職支援サイトの利用です。


看護師専門の転職支援サイトを活用すれば、認知症看護関連の求人を効率良く検索することができるため、実績を積む勤務先の目星がつけやすいというメリットがあります。

さらに、会員登録をすると個別にキャリアアドバイザーやコンサルタントがつくため、条件に合った勤務先を探してもらえたり、認定看護師認定審査を受けるためのサポートをしてもらえたりもします。

これらのサービスは全て無料で利用することができますので、まずは気軽に相談することから始めてみるのも良いでしょう。

この記事のまとめ

  • 認知症認定看護師のニーズは高まりをみせている
  • 認知症認定看護師は、高水準の認知症看護を実践する役割を担っている
  • 認定看護師になるためには、ある程度の学費と時間が必要となるため、働きながら認定を受けるのは難しい
  • 認定看護師審査に必要な実績を積みたい場合、転職支援サイトを利用して該当の勤務先を見つけると効率的



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