アドボカシーとは?



「看護においてアドボカシーが重要」「看護者はアドボケイトであるべき」といった話を聞く機会があるけれど、どのような意味かよく分かっていない・・・という方は少なくないのではないでしょうか。

日本の看護学校の指導や医療現場において、看護アドボカシーの位置づけや定義が明確にされているとは言えない状況です。

ここでは、看護領域におけるアドボカシーとはどのようなものなのか、看護師が患者の権利を守るとはどういう意味なのかについて触れておきます。


アドボカシーとは?

アドボカシー(advocacy)とはもともと法律用語で「支持」「擁護」を意味します。法律の話で使用されるときには、社会的弱者や性差別の存在を考えるうえで、そのような方たちの権利を擁護したり、代弁をするといった活動を指しています。

近年では法律分野以外でもアドボカシーという言葉が使われるようになり、日本の看護分野でも「看護アドボカシー」について述べられたり議論されることが増えています。

とはいえ看護現場における統一見解は特になされておらず、おおむね「看護師が患者の声を代弁し、支え、保護すること」といった意味で用いられています。


看護領域における看護アドボカシーとは



看護アドボカシーは全ての患者に適用されるべきものですが、なかでも自分で意志を伝えることが難しい認知症、寝たきりの方、高齢者、意識喪失の方、障害者、終末期の患者さんなどにアドボカシーが必要、と言われることがあります。

ただし、単純に「看護師が患者に代わって意見する」という行為を指しているのではありません。

患者をサポートすること

患者やその家族に代わって医師に意見したりするのではなく、患者やその家族が治療に不安や疑問を持ったり「何かを伝えたい」と思ったときに、そのサポートをするのが看護アドボカシーです。


具体的には、以下のような行動を指しています。

・患者とその家族に必要かつ的確な情報を伝える
・患者と家族の自己決定をサポートする
・患者と医療従事者との架け橋となる
・患者をとりまく医療スタッフ間の調整を行う


患者は医療のプロではなく、そして医師が一人の患者さんに割ける時間は限られています。そうなると、病状や検査結果、治療について説明を受けたときにも、患者は十分に理解できていないケースが多いのです。説明時には分かったような気がしていても、時間が経ってから疑問や不安が生じることもよくあります。

そんなとき、側にいる看護師が患者の理解度や意志を時間をかけて確認し、必要があれば医師に伝達する必要があります。患者やその家族の権利を守ることを目的にサポートする行動が、看護アドボカシーなのです。

患者に一番近い看護師

看護師がアドボケイト=アドボカシーの担い手となるべき理由は、上記のようなサポートに最も適した存在であるためです。

治療に深く携わるのは、医師・看護師・患者さんの家族ですが、家族は患者に近い立場であるものの医療知識は持ち合わせていません。一方医師は医療のプロであるものの、患者に割ける時間が限られています。


医療知識を持ち、かつ患者の側にいるのが看護師であり、だからこそ医師語(患者にとっては難しい話)と患者語(医師に遠慮して本意でなく発した言葉)とを通訳できるのは、看護師だけなのです。

「患者に近く感情移入しがちなことから、看護師はアドボケイトとしてふさわしくない。より客観的な第三者がアドボカシーを行うべき」という意見もありますが、現状の日本の医療現場では、アドボカシーの担い手は看護師以外には難しいと言えます。


患者の権利を守るのも看護師の仕事


本当の意味の「患者のため」とは?

アメリカの看護教育では、その初期から「ナースは患者の権利擁護者(アドボケイト)である」という考え方を教え込まれます。

日本でも「患者のためを考えて行動する」という姿勢を教えられていると思いますが、「どんな行動が患者の利益となり、権利の擁護になるのか」を具体的に教えられる機会は少ないのではないでしょうか。


例えばアドボカシーが重視される「インフォームドコンセント」の場を見てみましょう。アメリカのある病院で、抗がん剤の臨床試験を受ける患者に対し医師が説明をし、書類にサインをするシーンで、患者、研究者、第三者(証人)の3人のサインが必要でした。

その患者さんは、第三者欄のサインを弁護士や家族ではなく、病棟のナースに求めたそうです。この行動は「患者が看護師を権利擁護者として認識している」ということを意味しています。


しかし未だ本当の意味でのインフォームドコンセントが根付いているとはいいがたい日本では、治療の効果だけを伝えて副作用やリスクについては十分に伝えていなかったり、患者は十分に話を理解しないまま「医師が勧めるのだから効果があるのだろう」とサインをしてしまうケースが見受けられます。

そのように十分な情報や理解がないまま患者の自己決定が出来ない状況では、看護アドボカシーが十分である、患者の権利が擁護されているとは言えないのです。

看護師の質の向上が欠かせない

このようなインフォームドコンセントのシーンで、医師の説明がアドボカシーを重視したものか否かを判断し、そのうえで患者の権利を守るために行動できるためには、看護師自身が十分に教育を受け、知識を身につけ、かつ実践を積んでいる必要があります。

アドボカシーの観点では、患者と医療従事者の双方の視点、幅広い視野を培うことが看護師に求められています。

<アドボカシーとは?・まとめ>

  • アドボカシーとは「支持」「擁護」を意味する
  • 患者や家族の権利を守るためのサポートをすること
  • 患者の代弁、擁護の担い手には看護師が最適
  • 本当の意味での「患者のため」の行動を考える
  • 看護アドボカシーには看護師の質の向上が必要


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