看護師が老健へ転職する前に知っておきたいことは

最近、看護師の需要が高まり求人が増加しているのが、介護老人保健施設（老健）の仕事です。

求人数が増加したことによって、老健の仕事内容や給与水準に興味を持つ方も増えてきています。そこでこのページでは、老健に関する基礎知識や仕事内容についてご紹介していきたいと思います。

介護老人保健施設（老健）とは

介護老人保健施設は「老健」という略称で呼ばれることが多い施設で、介護分野においては、病院と自宅介護の中間的な性質をもつ介護施設と言われています。

特別養護老人ホーム（特養）が長期間の療養施設・終の住処としての役割を担うのに対して、老健は在宅復帰を目標として掲げており、短期間利用する施設となっています。

一般的に老健では身体状態や家庭環境などを考慮した上で、三ヶ月ごとに施設サービス計画（ケアプラン）を作成し、利用者に対して、自宅生活に戻るために必要な訓練やリハビリ、サポートを提供しています。

また、在宅復帰を目的としているため、職員も看護師や介護職員だけでなく、医師や医学療法士、作業療法士など、リハビリについて専門知識や経験をもつ人材が多数在籍しているという特徴もあります。

なお、老健を利用できる対象者は、原則65歳以上・要介護１以上の認定を受けている方となります加えて、特定疾病に認定された方であれば40～64歳の方でも施設の利用は可能となっています。

老健施設内での活動内容

老健では、食事や入浴、排泄などの日常生活を送る上でのサポートや、リハビリなどの機能訓練、病気療養の治療やケアを受けながら、在宅復帰・自立復帰を目指した生活を送ることとなります。

在宅復帰を念頭においたケアプランが組まれるため、当然終身利用は不可で、入所期間は３ヶ月から半年、長くとも１年未満とされています。入所期間については、３ヶ月ごとに入所継続or退所の入所継続判定が実施され、検討会議で「在宅復帰可能」と判断された場合は退所となります。

老健を利用するための費用・料金

老健は特養や民間の老人ホームなどとは異なり、入居一時金を支払うことなく入所可能です。月額でかかる費用には「施設利用費（家賃）、食費、水道光熱費、日常生活などの雑費などがあり、相場は個室の場合13～14万円、多床室（相部屋）の場合は7～8万円とされています。

また、これらに加え、医療費や介護保険料なども必要となります。

老健の現状

老健は同じ介護施設である特養と比較して、利用者数の増加が緩やかとなっており、他と比較すると人員不足や待機者数の増加といった問題が少ない傾向にあります。

とはいえ、これらの問題は「他と比べて程度が軽い」というだけであり、優秀な看護師を求める施設の数は年々増加傾向にあります。

老健における看護師の仕事とは？

老健における看護師の仕事は健康管理が中心となり、バイタルチェックや服薬管理、口腔ケア、褥瘡ケア、提携医療機関との連携窓口、等の業務を行います。

これらに加え、介護的な業務を担当することも多く、施設によっては看護師としての業務に加え、入浴介助や食事介助などの業務を任される場合も多く見られます。

本来であれば、看護師と介護士の仕事は分業されるべき所ですが、慢性的な人手不足が深刻な問題となっている介護分野においては、看護師と介護士の業務の境界線が曖昧になっているというのが実情です。

老健で働く看護師の中には「老健での看護師の仕事はサービス業」という方もいるほどで、自分の専門領域の仕事だけを行っていれば良いという訳ではないことがうかがえます。老健においては、看護師としての知識と経験を活かしながら、介護やレクリエーションなども担当できることが求められると考えて良いでしょう。

そのため、老健においては「看護師の仕事だけを行いたい」「看護師と介護士の仕事はしっかりと分けられているべき」といった考えを持つ方は、老健での仕事は向いていないと言えるでしょう。

老健で働く以上は、利用者の方々が病院よりも医療依存度が低いこと、看護師にも介護分野の仕事が割り振られること、これらを認識し納得しておくことが大切です。

老健にも夜勤は存在している

老健をはじめとした老人保健介護施設の場合「夜勤がない」というイメージを抱かれがちです。しかし、老健は医師が常駐しており、介護施設の中では病院寄りの性質を持つため、施設によっては夜勤がある場合もあります。

老健は病院と比較すると夜勤中に病変などが起こる割合は少ないとされますが、24時間介護が必要な施設利用者は多く、夜間の仕事量は決して少なくありません。

介護施設よりも給与水準が良い！？老健で働く看護師の給料

老健はその性質上、療養病棟に近い勤務形態が組まれています。そのため、看護師も夜勤・宿直ありの勤務となるケースが多く、給与に関しても基本給に夜勤手当や残業手当が上乗せされる形となります。

このため、老健の給与水準は特養や民間の有料老人ホーム（日勤のみ）と比べても高い傾向にあります。

現状、介護施設全体における看護師の年収は330万円～360万円が相場とされていますが、老健の場合はなんと460万円程度となっています。この給与は　病棟看護師に少し落ちる程度のものとなっており、介護分野の中ではかなりの高給であると言えるでしょう。

納得できる給与の老健を探すには

老健は看護業界の中では看護師の賃金が高い施設であることをご紹介しましたが、やはり施設間の給与差は大きいというのが現実です。

残念ながら、介護施設の中にはサービス残業などを強いる所も存在し、労働や拘束時間に見合った報酬を得られないと感じるケースも多々あると報告されています。

しかしながら、サービス残業の有無や実態については「入職してみないことには分からない」という場合が多く、求人サイトなどの情報だけでは、応募する時点で落とし穴があるかないかを見極めるのは難しいというのが現実です。

そこで活用したいのが、看護師専門の転職支援サイトで利用できる、キャリアアドバイザーやコンサルタントです。コンサルタントやアドバイザーは、基本的に条件に合った求人情報を提供してくれたり、面接日時のセッティングをしてくれたりと、様々なサポートを行ってくれます。

そのため、求人先の勤務形態や待遇などについても精通していることが多く、求人情報には載せられていないような職場情報や勤務形態などについても、情報を教えてくれる場合があります。

納得できる給料や職場環境を手に入れるためには、病院情報の収集は非常に重要な鍵となります。求人情報には書いていないサービス残業の有無や待遇面などについて知りたいことがある場合は、是非、キャリアアドバイザーやコンサルタントへ相談してみて下さい。

老健看護師になるには

老健で求められる能力とは

看護師が老健で働く上で特に重要とされるのは、やはり観察力やコミュニケーション能力です。

老健では、利用者の方の健康管理に加え、日常生活の介助や補助も看護師の担当分野となります。また、在宅復帰・自立復帰を目標としたプログラムを実践しているため、過剰な手出しやサポートはかえって利用者の方の邪魔となってしまいます。

そのため、通り一辺倒なサポートや介助を行っていては「手出しのしすぎ」「不必要なサポート」などを行ってしまう場合が多く、利用者の方の一挙手一投足をしっかりと観察しながら、必要なサポートや介添えを必要な分だけ行うことが重要となります。

常に利用者の方に目を配り、なにが必要でなにが不要なのか、今行っている介助やサポートはいつまで必要なのか、しっかり観察しながら先を見据えられる能力が、老健看護師には必要だと言えるでしょう。

また、老健は介護士だけでなく医師や理学療法士、栄養士など、医療やリハビリ、栄養学などの専門家が多数在籍し、それぞれ連携を取りながら業務を行っています。そのため、業務を円滑に進めるためには密なコミュニケーションを心がけ、意思疎通しやすい環境を整えることが重要です。

加えて、老健には提携医療機関などが存在していることが多く、医師や医療機関からの指示に従って、看護師が医療処置や緊急対応を行わなければならないケースも少なくありません。こういった時に、業務を迅速かつ的確に行うためにも、コミュニケーション能力は重要となります。

もちろん、コミュニケーション能力は施設利用者やそのご家族への対応の際にも必要なものです。特に、老健の看護師の場合は看護業務だけでなく、リハビリやレクリエーションなどを担当するケースも多いため、利用者の方と接する時間が長く、距離感も近い傾向にあります。

それだけに、高いコミュニケーション能力を持つ看護師は利用者やそのご家族から好意的にとらえられることが多く、協力も得られやすいため、リハビリや日々の訓練の効率を上げる一因にもなり得ると考えられています。

また、老健では看護師も介護業務を担当するケースが多いため、食事介助や入浴介助といった介護スキルも求められます。看護業務にこだわって介護を軽視する人、介護スキルが著しく低い方などは、老健では不要な人材と判断される場合があるので要注意です。

この記事のまとめ

老健では在宅支援、自立支援を目標としている
老健は特養と異なり、看護師をはじめ、医師や理学療法士、管理栄養士など各方面の専門化が多数在籍している
老健における看護師の仕事は健康管理が中心となるが、介護分野の業務も多数こなす必要がある
老健には夜勤があるため、介護施設の中では看護師の給与水準が高い
老健看護師に求められる能力には、コミュニケーションスキルや観察力などがある

老健は病院看護師と比較して拘束時間が少なく、介護業界の中では給与が高い傾向にあるため、最近は人気の勤務先となってきています。

人気が高まるにつれて、優良な老健求人には応募が殺到するようになり、競争倍率もかなりのものとなってきています。こういった人気求人案件の多くは、看護師専門の転職支援サイトで「非公開案件」として掲載されるケースが多いので、情報を逃さぬためにも、転職支援サイトを上手に活用することをおすすめします。